かなりマイナーなカテゴリーになりますが、法昆虫学者についての本を紹介したいと思います。
法昆虫学とは、死体の周りにいるムシ(主にウジとハエ)を観測することで、死後どのくらいの時間が経過しているのかを割り出すという技術を研究する昆虫学者のことを指します。
日本ではかなりレアな職業ですが、海外では日本よりはメジャーであるようです。
ハエは死体の第一発見者であることが多く、温度などの条件が整えば死後10分で駆けつけてくることもあり、密室でなければどこからともなくやってきてほぼ100%死体を見つけ出してくれます。
焼死体などでは、ハエの生育していた時刻と火事の発生時刻が合わないときは殺人後の証拠隠滅のための放火の可能性などが浮かび上がることもあるそうで、ムシを見ることは重要だそうです。
今日はそんな法昆虫学についての本として以下の2冊をまとめて紹介してい来たいと思います。
・法医学昆虫学者の事件簿
・ムシから死亡推定時刻がわかるのか
では、始めます。
ムシから死亡推定時刻がわかるのか
まずは、最近発売された日本の法医昆虫学者の本『ムシから死亡推定時刻がわかるのか』です。
誰にも看取られずいつ亡くなられたかわからない死体、あるいは腐敗が進み誰だかわからなくなった死体について死亡推定時刻をハエとウジから判別するという仕事を生業にする著者が、ムシを観測することで何がわかるのか、そしてムシを観測し分析するとは実際には何をするのか、などについてわかりやすく解説してくれます。
具体的には、執刀医が死体を解剖する横で著者らは昆虫を採取し、そのサイズや種類を確認し、季節を考慮したうえで死亡日時を割り出していきます。
最近の事例なども書かれており、韓国の大型旅客船の転覆事故でも、逃走し自殺した運営会社の会長の死亡時刻の推定にハエが役立ったそうです。ほかにも国内で押収されたマリファナが国産か密輸されたものかを、付着していた昆虫から判断したり、といった事例が挙げられています。
また、ハエを使った事件解決は、古来からあったようで
鎌で殺された死体が発見される。検死官は、付近の住民に鎌を全て持参させる。集められた鎌のうち1つにのみハエが集まる。「お前の鎌にのみ、ハエが集まるのは血生臭さが残っているからだ」犯人は言葉を失い罪を認めた。
こんな感じの話が、中国の南宋時代にも文献(1247年)があるみたいです。
本書は文章も丁寧で図も多くわかりやすいので、法昆虫学について知りたい人の1冊目にオススメです。
Amazon:虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話
楽天:虫から死亡推定時刻はわかるのか? 法昆虫学の話 [ 三枝 聖 ]
法医学昆虫学者の事件簿
著者はアメリカ法医昆虫評議会の設立メンバーであり、この分野の第一人者であるマディソン・リー ゴフ!
といってもピンとくる人はあまりいないかもですが、この業界ではすごい人みたいです。
本書では、法医昆虫学の役割として「被害者の死後経過時間を割り出すことにより、逮捕後の犯人が有罪になる証拠を集めること」としています。
なので、ムシで逮捕!みたいな劇的な展開はあまりなく、結構地味な活動です。
ただアメリカでは、この虫はこの地域にしかいない、とかそういうデータが管理されており、国土が広いこともあって車に付着したムシが手掛かりになることは結構あるみたいです。
様々な事例がかなり多く挙げられているので、本書を読めば虫をみればわかることと、虫をみても分からないこと、について知ることができます。
結構難解な表現もあるので、先に『ムシから死亡推定時刻がわかるのか』を読んで、さらに事例が気になった人が読むのがオススメです。
ちなみに本書は『死体につく虫が犯人を告げる』の文庫バージョンなので内容は同じです。ご注意ください。
Amazon:文庫 法医学昆虫学者の事件簿 (草思社文庫)
楽天:文庫 法医学昆虫学者の事件簿 (草思社文庫) [ マディソン・リー・ゴフ ]
終わりに
自分は法昆虫学という話を読んで、すごい研究だ!と思ったけど、『虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話』の著者は、自身を真の昆虫学者でもなく医者でもない今の地位を中途半端と考えているみたいです。
個人的には死体と向き合う昆虫学者というのは、現場を知っているという意味で十分強いと思うのですが、まだまだ日本では認知されにくい職業なのかもな、と思いました。
という機会は本好きには多いかと。
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この機に他のシリーズ本の読む順番を、確認してみてはいかがでしょうか。