綾崎隼さんの新刊本『世界で一番かわいそうな私たち』の第2巻が出ていたので買ってきました!
さっそく読んでみたので、まずはネタバレにならない程度の感想を書いていきます。
目次
『世界で一番かわいそうな私たち』第1巻のおさらい
まずは第2巻に進む前に第1巻のおさらいをしなくては!と思っていたらちゃんとプロローグでおさらいがなされていました。
なので本書を読むときは、おさらいなしでそのまま読んでも大丈夫です。
ここではせっかくなので、第1巻をまだ読んでいない人に向けて、簡単におさらいをしていきましょう。
『世界で一番かわいそうな私たち』では、フリースクール静鈴荘を中心に、10年前に発生したバスジャック事件の被害者・秋葉、同じくバスジャック事件に巻き込まれた小説家・舞原詩季とその妻である杏らを中心に、フリースクールに通う生徒たちにかかわる事件を解決していくという物語。
とはいえ、単なるミステリー小説といった感じを超えていて、本文中でも何度も「教師は探偵ではありません」と述べられている通り、事件をただ暴いて終わり!ではなく、答えのない人間関係の根本的な解決に向けて教師として事件に当たるという点が特徴です。
第1巻では、フリースクールに新たに通うことになった生徒・島田裕貴の課題を解決し、エピローグで先生たちがお酒を飲んでいる中で、とある事実が発覚したところで終了!となっていました。
かんたんに言うとこんな感じです。
第1巻のさらに詳しい感想は、以下の記事にまとめているのでそちらを参照ください。
世界で一番かわいそうな私たち第2幕のあらすじ【ネタバレ少なめ】
ここから第2巻の話に入って行きます。
ちょっとネタバレもあるので第1巻をまだ読んでいない人はこの辺でリターンしてください。
第2巻の時系列としては、第1巻の終了時の時間の直後となります。
第1巻の最後で杏先生が「瀬戸内バスジャック事件の犯人はあなたですね」と指摘したところで終わっていて会話の途中だったので、その会話が再開されていくイメージ。
第2巻では、特に弁明もなく犯人であることを認めた佐伯先生が、当事者である秋葉や詩季に犯人であることを伝えるかどうか、静鈴荘を去るかどうかをあーだーこーだ話しているうちに、新たな事件が発生します。
今度の当事者はひー君こと、成神幹久です。
第2巻も第1巻と同様に入れ子構造で物語が進みます。
ここからは第2巻のネタバレも多いので、第2巻を読んでいない人はここで戻るほうがよいかも。
【ネタバレ注意】世界で一番かわいそうな私たち第2幕のあらすじ
では第2巻のあらすじと感想(ネタバレあり)を書いていきます。
第2巻では、ひー君の家庭事情が明かされます。
簡単に書くと、ひー君の父親は飲酒運転でトラックを運転し、2人を死亡させ、1人を植物状態にして服役中。その被害者家族の唯一の生き残りである中年女性から成神家が恨まれているという状況です。
夫と娘を失い、息子も植物状態となった被害者家族の妻・細谷雅子は、行き場のない怒りを加害者家族である成神家に嫌がらせ行為を繰り返します。
直接の加害者である父親は服役中であるため、殺人者家族にその矛先が向き、殺人者家族であるというビラ配りなどの誹謗中傷を受け、成神家は転校を余儀なくされます。
転校しても転校してもその引っ越し先を突き止められ、嫌がらせを受け続ける。
そして行き着いた先がフリースクール・静鈴荘でした。
静鈴荘はまだ細谷に特定されていないはずでしたが、ついに突き止められ嫌がらせ行為が始まります。
今回はこの事件を静鈴荘メンバーが対応します。
今回も教師は探偵ではなく、警察でも解決できない方法で相手と向き合います。
第2巻では第1巻のように嫌がらせをしている犯人を特定するステップはないので、嫌がらせを繰り返してくる細谷さんをどう対処するか、というのが主題となっています。
警察に言っても注意はしてくれるけど、また繰り返されるだけで根本的な解決にならない。
裁判に持ち込んでもおそらく勝てるだろうが、金銭的解決では意味がない(細谷家に支払われる賠償金は膨大なので名誉棄損の慰謝料など無力)。
そして何より被害者家族の細谷雅子を苦しめる方法を望んでいない。
という単純な正義では解決できないような状況となっています。
結局ごちゃごちゃやりつつ最後には杏先生がひー君と佐伯先生を引き連れて自ら細谷と直接対決に赴き、解決していきます。
このやり方がえぐいほどに相手に寄り添っていて、感想としては、前作でも本作でも思ったのですが、壊れた思考をもつ人の立場になって考えてその前提の中で相手を封じ込める方法をとる!というやり方がすごい上手いなと思いました。
杏先生の相手への理解力がずば抜けている点については「誰よりも壊れているからこそ理解できる」というようなニュアンスもあり、「世界で一番かわいそうな私たち」というタイトルは杏先生と夫の舞原詩季の関係性を指しているような終わり方で第3巻(完結編)につながります。
瀬戸内バスジャック事件が引き起こされた真相の話も明らかに
そしてひー君をめぐる事件の裏でもう一つの見どころが瀬戸内バスジャック事件を引き起こしたきっかけと動機の話。
こっちもかなり面白いです。
詳しい話は避けますが、ただ面白そうだから!とかではなくて、当時13歳だった佐伯先生には、彼なりの正義と根拠があって事件を引き起こしたのだというのが分かります。
佐伯先生の中の心の整理的な決着は一応本巻の中で着くので、第3巻ではいちばん闇が深そうな舞原夫妻の話と、瀬戸内バスジャック事件の真相を如何にして秋葉に伝えるべきか、というところが語られるのかなと思っています。
第2巻もすごいいいところで終わっていての引きもばっちりなので、第3巻の発売する5月が待ち遠しいなと思いました。
終わりに
今日の昼くらいに買ってきて、家に帰ってお風呂を入れながら何となく読み始めたら、そのままお風呂場で一気に読み切ってしまいました。
そんなに紙面が多い本ではないですが、中身はぎゅっと詰まった作品だなと思うので、個人的にはかなりオススメです。
お値段的にも定価690円とリーズナブルなのもありがたい。
ぜひ読んでみてください。
ではまた。良い読書ライフを!
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