僕は昔、何冊か村上春樹の本を読んだことがあった。
それは果たしていつのことだったか、そのきっかけがなんであったか、今では正確に思い出すことはできない。
しかし、読んだことがあるという1点においてのみ、それは確かに事実であるように思えた。
・・・みたいなぐだっとした文章が特徴の村上春樹の新作「一人称単数」を、久々に新刊ほやほやで購入しました。
(普段はだいたい出てしばらくしてから何となく読んだり、あるいは読まなかったりしてる)
で、まだ読み途中なんですが、一旦ネタバレなしの感想を書くことにしました!
目次
村上春樹の最新刊「一人称単数」とは?短編集です。
まずは村上春樹の新刊「一人称単数」について、かんたんに概要を紹介します。
本作はいわゆる短編集となります。
お互いに独立したお話が7つくらい入っています。
確かもともとはどこかの雑誌に連載していた奴が、ある程度量が溜まったから出版します!みたいな形式だったはずです。
なので、長編を期待した人はミスマッチになるので要注意。自分は村上春樹の長編は(本題に入るまでが)長すぎて(読むのが)大変なので、短編の方が好きで買いました。
P.S.本書に関しては小説の形態でありつつも、半分自伝みたいな感じで作者自身のような主人公がよく出てくるのが特徴です。
「一人称単数」を読んだ感想レビュー!村上春樹詰め合わせセットみたい!
で、さっそく読んでみました。
まだ全部は読んでいないんですが、最初の3つくらいを読んだところの感想で言うと、
これ、村上春樹の詰め合わせセットみたいだな!
と感じました。
何故かと言うと、例えばこんな具合。
石のまくらでは行きずりの関係が描かれる
最初の「石のまくらに」という話では、
「19歳くらいのころに同じバイト先の女性と成り行きで一夜を共にすることになった時の話」
が語られます。
この
「特に求めたわけではないけど、何となく男女の関係になり、その後は特にあとくされもない」
というのが、『ノルウェイの森』をはじめとした村上春樹作品でめっちゃよくある展開なんです。
なので、これが先頭にあることで、久々に村上春樹作品を読んだ自分はその文体を含めて、
そうそうそんな感じだったわ!
と一瞬で記憶を取り戻しました。
ちなみにこの話に関しては、短歌が絡めてあるというのは新しいなと思いました。
夢の中のようなクリーム
で、次のお話が「クリーム」というタイトルなんですが、これも「村上春樹ぽい」んです。
主人公が年下の友人に向けて、過去にあった話を振り返って聞かせるという回想形式の文体なんですが、これがまるで夢の中のようなふわっとした感じで進んでいきます。
このふわっとした夢の中のような感じも村上春樹作品でよくある展開で、
「あーそうそう、こんなのもあったわ!」
と思ってさらに記憶を取り戻しました。
ちなみにこの「クリーム」に関して言うと、「阪急に乗って神戸駅で降りて~」という具体的な地名を含む描写があって、これは意外でした。
というのは、村上春樹作品って(これは勝手な自分のイメージですが)世界中のどこでも当てはまるような汎用的な場所描写であることが多くて、ニューヨークとか東京とかそういう都会はまだしも「神戸駅」というようなマイナーな都市が出てくることってほとんどないんです。
なので、ここで「阪急」「神戸駅」という2つが(全然ふつうの小説なら出てきてもおかしくはないんですが)出てきたことに唐突感を感じて、
お、一味違うやんけ・・・?
と勝手に思っていました。
音楽の話が3,4話に続く
そして村上春樹というと、もう一つよくあるのがジャズ(音楽)についての話です。
著者自身がジャズ喫茶を経営していたほどのジャズ好きであり、そんな話も多いです。
なので、音楽に関してのみめっちゃ具体的な描写になったりするのも特徴で、第3話以降音楽の話が続き、
「そうそう、こういうミュージック寄りな部分もあったわ!」
とさらに思い出しました。
後半の表題作+品川サルが面白かった
全部読み切った感想としては、後半に配置されている「品川サルの告白」と表題作「一人称単数」が面白かったです。
品川サルの告白は、その名の通り元品川区に住んでいたサルで、人の言葉を話、人の名前を盗むことができます。
一人称単数は本書で書き下ろしの新作なんですが、こちらも本書のテーマのまとめみたいな感じで面白かったです。
こんな感じで村上春樹作品の特徴を全体的に網羅した詰め合わせセットのような1作だと感じました。
なんだかんだ言って村上春樹作品の独特な文体は癖になるし、たまに読みたくなる味がありますよね。
そんな村上春樹作品を読むの久々なんだけどついていけるか心配で・・・という人は、長編ではなくこちらの一人称単数(短編)からリハビリするのもオススメです。
そんな感じ。ではまた、良い読書ライフを!
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